サマータイムに関する声明文


2018年(平成30年)8月24日

日本公開天文台協会

会長 安田 岳志


 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの酷暑対策を念頭に「サマータイム制」の導入が提唱されています。
 しかし、競技の時期や開始時刻の変更ではなく、全国の時刻を変更するサマータイム制の効果の有効性については考慮が必要な要素が多く、自然と生活との調和を念頭に置いて活動している日本公開天文台協会としては、導入に反対を表明せざるを得ません。

 日本公開天文台協会としては、2008年6月26日の全国大会で採択した「サマータイムに関する声明文」を今一度確認し、サマータイム制の導入に、あらためて反対いたします。

サマータイムに関する声明文(2008年6月26日) (PDF)

※2018年付記があります

※PDF掲載の声明文の別紙には、サマータイム時の日の出や日の入りの時刻を掲載しています。この度の報道で検討されているとされる2時間のサマータイムの場合、さらに1時間加えることになり、国民の多くの生活リズムが大いに乱される極めて重大な影響が懸念されます。

 なお、声明文に記載されている以外にも考慮が必要な主な要素としては次のものが挙げられます。


  • (1) サマータイム制は、年に二度の時刻の書き換えを要します。現在はネットワークにつながった様々な機器が個々に時計を内蔵し、時刻を同期しながら私たちの生活を支えています。単に目に入る時計だけではなく、目に見えないたくさんの機器の時刻の書き換えには、その前後で多くの人的作業が発生します。また、ソフトウェアの変更や機器の相互関係の動作検証には時間がかかり、それにかかる膨大な作業について、時間や費用を短時間で評価する事は難しいと思われます。


  • (2) 日本睡眠学会・サマータイム制度に関する特別委員会では、睡眠覚醒リズムが混乱し健康を害する可能性を指摘しています。http://www.jssr.jp/data/pdf/summertime_20120315.pdf
     さらに、同委員会では、日本人の文化とライフスタイルの特性から、睡眠時間の短縮を危惧しています。すでにサマータイムが導入されている国でも概ね1時間の変更であり、現在検討されている2時間もの時刻変更が健康や生活にどのような影響を与えるのか、この点の評価はまだのようです。


  • (3) サマータイムを導入している欧州委員会(EU)では、参加国からのサマータイム廃止の提案を受けて、2018年夏にサマータイムに対する経済性や健康に対する影響などについてアンケート調査が行われました。https://ec.europa.eu/info/consultations/2018-summertime-arrangements_en
     すでに実施されている国々の中でも賛否が別れているサマータイムについて、短時間で導入の是非について結論を出すことは、社会に対して混乱を招く懸念があります。(参考:https://mainichi.jp/articles/20180809/mog/00m/030/009000c)


 いずれも、「時制」を強制的に変えることによるデメリットであり、さらに準備時間が限られる中での導入は、社会的に大きな負の要素となることが懸念されます。

 競技における酷暑対策の必要性は認めますが、サマータイム制を導入するよりも競技時刻の見直しを第一とすることが、社会生活にも生産活動にも大きな負荷がかかりにくく、各層の柔軟な対応が可能になると考えます。

関係各位におかれましては、サマータイムについての意見を精査し、適切な判断をされることを切に願います。