JAPOSトップページへ

JAPOS火星大接近観測キャンペーン

 2018年夏、赤い火星が地球に大接近します。火星の大接近は2003年以来15年ぶりです。夏休みの観察好期ですから、この機会にぜひお近くの公開天文台へどうぞ。

火星さんようこそ

【1】火星大接近2018

 赤い色が特徴の火星は、地球の外側を公転する外惑星です。火星は外惑星の中では最も地球に近づきますが、実際の大きさは地球のわずか1/2程度しかなく、望遠鏡で拡大しても表面の観察の難しい天体です。地球からの距離も大きく変化します。地球との距離が最も近くなる時期を「接近」といいますが、この用語は距離が大きく変化する火星以外ではあまり使われることはありません(※1)。接近の頃(衝の頃)は、火星を観察する好機です。衝と次の衝となるまでの周期のことを「会合周期」といいます。火星は地球と軌道が近く、地球と火星の公転速度(太陽を周る速度)もあまり違いません。地球が逃げても火星もそれなりの速度で追いかけるために、その差は少しずつしか広がらないので、火星の会合周期は全惑星の中で最も長く、約2年2ヶ月となります。
 最接近時の距離も地球との位置関係でかなり異なります。理想的に近い場合を「大接近」といいます(※2)。最も遠い「小接近」とでは2倍近くも距離に差があり、すなわち見かけの大きさも2倍近くも異なってしまいます。火星の大接近は15~17年ごとに訪れ、観察の絶好機となります。


解説図:近年の火星の接近(2005年~2020年)
火星の2005年から2020年の位置

※1:
 地球を挟んで、太陽の反対側に惑星が来る位置を「衝」と言います。木星や土星では、「接近」という用語はあまり使われることはなく「衝」が使われます。
 「衝」と「接近」は、厳密には定義が異なります。「衝」は、外惑星と太陽の黄経の差が180°になる瞬間を指し、「接近」は地球と惑星との距離が極小となる時です。
 2018年の火星は、7月27日に「衝」で、7月31日に「最接近」となります。

※2:
 「大接近」は慣習的な用語で、どの程度まで近づくと「大接近」とするかの定義はありません。2016年の中接近の際には、「スーパーマーズ」という造語が報道されましたが、これも天文学上の用語ではありません。

【2】火星観測ガイド

(1) 2018年7~8月の星空

 2018年の夏の夜は、大接近の火星はもちろんですが、金星も8月18日に東方最大離角で観察の好期を迎えますし、木星と土星も夕空の南天で明るく輝きます。この夏は4大惑星が夕空を彩ります。とりわけ、金星,木星,火星は明るく輝きますので、どこにどの惑星があるかをまず知りましょう。最接近時、火星は-2.8等にもなり、夕空に見えている金星(-4.3等),木星(-2.0等) と匹敵する圧倒的な明るさで輝きます。


○7月14日(土) 20時30分頃/東京
7月14日の火星

○7月28日(土) 20時30分頃/東京
この日未明から明け方には皆既月食も見られます。
7月28日の火星

○8月11日(土)20時30分頃/東京
8月11日の火星

○8月25日(土)20時30分頃/東京
8月25日の火星

 火星は、7月27日に衝,7月31日に最接近となりますが、この日だけが特別に大きく見えるわけではありません。火星の視直径(見かけの大きさ)は少しずつ変化しますので、前後一ヶ月くらいはおすすめ期間中ととらえて観察しましょう。


○2018年7月~9月の火星の視直径の変化
火星の視直径
図中の火星の模様は21時頃に見えているものです。(ステラナビゲータ10使用)

(2)火星の観察

 火星など惑星は明るい対象ですから、通常の天体観察とは異なり街中でも十分に観察することができます。空の暗さよりも、気流の状態が観察の良し悪しに影響します。火星が地平線に近いときには、地球の大気の影響を受けやすく、よく見えません。できるだけ地平線高度の高い時刻に観察しましょう。おおむね地平高度が20度以上を推奨します。地平高度が20度を超えるのは、火星が地平出してからおよそ2時間後です。


○各地の日没と火星の出時刻
7月 8月 9月
7日 4日 21日 28日 4日 11日 18日 25日 1日 8日 15日 22日 29日
札幌 日没 19:18 19:15 19:10 19:03 18:55 18:45 18:35 18:24 18:12 18:00 17:48 17:35 17:22
火星の出 20:59 20:30 20:00 19:28 18:55 18:22 17:49 17:18 16:48 16:21 15:55 15:31 15:08
東京 日没 19:02 18:59 18:56 18:51 18:45 18:37 18:29 18:20 18:11 18:01 17:51 17:40 17:30
火星の出 20:42 20:13 19:42 19:09 18:35 18:02 17:29 16:58 16:29 16:02 15:37 15:14 14:53
大坂 日没 19:16 19:14 19:11 19:05 19:00 18:53 18:45 18:35 18:27 18:18 18:08 17:58 17:48
火星の出 20:57 20:27 19:56 19:23 18:49 18:16 17:43 17:12 16:43 16:16 15:51 15:29 15:07
福岡 日没 19:34 19:32 19:29 19:24 19:18 19:12 19:04 18:56 18:47 18:37 18:28 18:18 18:08
火星の出 21:15 20:45 20:13 19:40 19:07 18:33 18:00 17:29 17:00 16:33 16:09 15:45 15:25
那覇 日没 19:27 19:26 19:24 19:21 19:16 19:11 19:05 18:58 18:51 18:44 18:35 18:28 18:20
火星の出 21:08 20:38 20:05 19:32 18:57 18:23 17:51 17:20 16:51 16:25 16:01 15:39 15:19

7月中の火星の出は、日没よりもやや遅くなりますので外出の際には注意ください。
8月初めには日没とほぼ同じ時刻に地平出するようになります。


○この時期の火星,土星,木星,金星との比較

 火星の最接近(7月31日)の、火星,土星,木星,金星の見かけの大きさの比較。東から西へ、4惑星はこの順に並んでいます。他の惑星も火星同様に大きく観察することができます。

4惑星の見え方

 火星の模様で最も分かりよいものは、極冠と呼ばれる火星の北極と南極にできる帽子のようなドライアイスの氷でしょう。2018年の接近時では、南極冠や火星の地表の模様を観察することができます。火星の模様でよく知られているものには、大シルチス、太陽湖、キンメリウムの海などがあります。主な模様は図を参照して下さい。
 火星の自転は24時間38分で地球の自転に近く、1時間観察すると、火星の経度で約15°向きを変えていきます。翌日の同じ時刻では約10度だけ向きを変えていますが、ほぼ同じ面を向けて見えます。


○火星図(技術評論社星空の教科書より)
4惑星の見え方

 火星は明るい対象ですから、スマホやデジカメでも意外と写すことができます。ただ、望遠鏡とカメラのレンズの中心が合わないと、なかなか写野の中心に火星をいれることができません。カメラを接眼レンズから離すと割合に写野に入りやすくなります。このままでは像が小さすぎますので、そこに写る火星を確認しながら接眼レンズに近づけていくと上手く合わせやすいでしょう。いずれにしても慣れが必要ですので、繰り返し練習しましょう。

 惑星の観察は、大きな口径の望遠鏡だとより有利です。この機会に、ぜひお近くの公開天文台に足を運びましょう。

【3】7月28日皆既月食情報

 月食は地球の影の中に満月が侵入し、月面に日照が当たらなくなるために月が欠けていく現象です。月が完全に地球の影の中に入ることを皆既月食と言います。地球の影に入るにつれて、月は徐々に暗くなります。真っ黒にはならず赤味を帯びた色に染まります。これは、地球に大気があるためです。太陽の光は地球の大気を通過する際に散乱されにくい赤い色だけが残ります。さらに、大気の屈折により赤い光は影の内側にまで曲げられて、月をほんのり赤く照らすのです。
 火星が大接近中のさなか、7月28日未明から明け方には全国で皆既月食が見られます。今回の皆既月食のすぐ傍らには、赤々と輝く火星があり、歴史的にも記憶に残る光景となることでしょう。
 部分月食の開始時間は03時24分で、皆既食の開始は04時30分です。日出の早い東日本は観察できる時間が短くなります。西日本では月没の頃まで観察可能です。


予報図(東京)
7月28日の月食の見え方

2018年7月28日皆既月食の予報

各地の日出と月没時刻

【4】各天文施設の情報

アストロアーツ・パオナビに情報を掲載しております。こちらをご参照ください。

詳しくは、直接各天文施設へお問い合わせください。

【5】火星大接近情報リンク